現在主流となっている打掛や振袖の多くは「先染め」といわれ、あらかじめ染めた糸を織り上げて模様を形作っています。古来より儀式の衣裳には格と約束があります。
儀式の衣裳としてふさわしいのは白生地から染め上げる「後染め」の手法。
純白清浄な絹から織り上げる白生地に、儀式の品位の格を染め上げた衣裳が、より格式高い儀式の晴れ着といえるのです。
作家が夢見た打掛は、家を建築するのと同じことです。
基本構想から基本設計になり、部門設計となって各職人に指示されるのです。それは地ならしをし、基礎を打ち、土台を敷き、柱を立て、屋根が仕上がるように、友禅も数ある行程を夢み、連想し、仕事を決め、色を選び、方法を示して、事に当たらせる指示書が、各名匠の手元に渡されていくのです。
1枚の打掛の1部門を受け持つ職人も、すべての完成を夢み、自分の部門を守ります。
友禅は、名もない職人衆と匠たちが、伝統の技法を通し、心を1つに結集して創作する「染めの華」です。
意匠を練る図案にはじまって、仕上げの刺繍にいたるまで、25行程もの手と技をくぐるのです。